二世帯住宅は間取りに注意!デメリットと失敗しないポイント
二世帯住宅の間取りは、大きく次の3タイプに分類されます。
1.完全同居型
2.部分共有型
3.完全分離型
各間取りにはデメリットも多く「後悔した」という声も少なくない二世帯住宅。
失敗しないポイントは、住む人全員が二世帯住宅のメリットとデメリットを把握し、しっかりと話し合って同居することです。
この記事では二世帯住宅の間取りや設計のポイントについて解説します。
1.二世帯住宅とは?
二世帯住宅とは、親世帯と子世帯が一緒に生活するための住宅のことです。
1.どんな二世帯住宅でも共通する!4つのデメリット
まずは、二世帯住宅のデメリットをご紹介します。
1.世代間ギャップがストレスに
二世帯住宅では、世代の異なる家族が一つ屋根の下で生活を共にするため、どうしても「世代間ギャップ」が生まれやすいものです。
世代が違えば、考え方や常識、味覚、生活リズムも異なります。
また親世帯、子世帯で生活リズムが異なることも予測され、摩擦が生まれやすいといえます。
2.お金で揉めやすい
完全同居型二世帯住宅は床面積が広く、一世帯の戸建住宅より建築費が高くなりがちです。
さらに部分同居型や完全分離型の二世帯住宅では、キッチンや浴室などの住宅設備を2つずつ設置することで、建築費が上がります。
家を建てる前には、総額はなかなかわからないもの。
お互いの分担比率を決めるだけではなく、いくらまで予算が出せるかもしっかり把握しておくようにしましょう。
また二世帯住宅では、ランニングコストで揉めてしまうケースも。
同居前に水道光熱費の負担割合を明確にしておいたとしても、使用頻度や使用量が変わって揉めることもあります。
3.貸しづらく、売却もしづらい
二世帯住宅は一世帯にしては広すぎて、二世帯で住むにしても住む人に合わせたものが多く、貸しづらく、売却もしづらい傾向にあります。
そのため、親世帯が住まなくなった後のことも考えて間取りを決める必要があるでしょう。
4.相続をめぐる親族間トラブルが起きやすい
二世帯住宅に住んでいた親世帯が亡くなった場合は、同居していた子世帯が不動産を相続し、そのまま住み続けるケースが多いものです。
相続人(相続を受ける人)が他にもいて、被相続人(相続する人)に金融資産がなく、相続できるのが不動産のみの場合、遺産トラブルに発展する可能性があります。
2.二世帯住宅はデメリットばかりではない!4つのメリット
一見デメリットが多い二世帯住宅ですが、もちろんメリットもあります。
1.建築費や水道光熱費など費用負担が軽くなる
二世帯住宅の建築費用は一般的な一戸建て住宅よりは高額ですが、二世帯で負担をすることでマイホームを安く手に入れることができます。
また後程、解説する「完全同居型」と「部分共有型」の二世帯住宅は、水道光熱費の基本料金が1世帯分になるので、水道光熱費が抑えられます(ただし使用量は2世帯分なので、電気料金の契約アンペアが上がり基本料金が高くなることがあります)。
2.子供の面倒を見てもらえる
共働き世帯が多い今、一世帯だけで子を育てることはなかなか難しいもの。
二世帯同居であれば、親世帯も孫の面倒を見ることはある程度、了承済みでしょうから、家事育児の負担は軽減するはずです。
3.介護がしやすい
子世帯が実家から遠く離れて暮らしていると、費用も体力も負担が大きいです。
二世帯同居であれば、直接的な介護がしやすいだけでなく、子どもが医療や介護の担当者と親の介護について直接話せる安心感もあります。
4.税金面でメリットも
世帯住宅を2戸の住宅とみなす「区分登記」をすれば、税金の軽減が受けられます。
具体的には、固定資産税(家屋、土地)と不動産取得税において、二世帯分(親世帯・子世帯)の軽減措置を受けられます。
2.二世帯住宅3タイプの特徴とデメリット
「二世帯住宅」と一口にいっても、一つ屋根の下ですべてを共有する間取りタイプだけではありません。
各間取りタイプには、他のタイプにはないデメリットもあります。
完全同居型 | 部分共有型 | 完全分離型 |
お互いストレスがたまりやすい | 共有部分の使い方や掃除などを決めておかないと揉めごとに発展 | 建築費がもっともかかる |
逃げ場がない | 生活時間帯の違いによる音のストレスを感じやすい | 内部で行き来できないため介護する場合に負担がかかる |
プライバシーが保てない | 売却しづらい | 親世帯と子世帯の関係性が悪化した場合、話し合いの場が持ちづらい |
1)完全同居型
玄関、浴室、キッチンなど、住宅設備すべてが1つのみの二世帯住宅です。
1世帯のみの戸建住宅とあまり違いはありません。
完全同居型のデメリット
完全同居型二世帯住宅は、建築費は抑えられるものの、実子ではない配偶者(嫁、婿)がストレスを受けやすい間取りです。親世帯とどうしても顔を合わせてしまう間取りですので、逃げ場がありません。
また、プライバシーの確保がしづらい点も大きなデメリットです。
生活リズムが違う2家族がひとつ屋根の下で暮らしているので、気配や足音で何をしているかわかるのもストレスの要因となります。
2)部分共有型
親世帯・子世帯で、住宅設備と部屋の一部を共有する二世帯住宅です。
間取りの考え方によってプランは様々ですが、玄関・浴室・キッチン・リビングを二世帯共有にする間取りや、玄関・浴室・リビングを共有にして、親世帯にもミニキッチンをつくるプランなどがあります。
部分共有型のデメリット
部分共有型二世帯住宅のデメリットは、完全同居型と同様に、生活時間帯の違いからストレスがたまりやすいことです。
また、共有部分の掃除や片づけがどちらかの世帯に偏る、使いたいときに洗面所が使えないなど、話し合いをするほどでもない小さな不満がたまり、重大なストレスに発展する可能性があります。
3)完全分離型(垂直分離・水平分離)
完全分離型の二世帯住宅は、2タイプ。
上下の階に分離する垂直分離型(縦割り分離)と平面で分離する水平分離型(横割り分離)です。
玄関、浴室、キッチン、リビングなど、全て2つずつ必要になるため、建築コストが高くなります。
ただ建築コストが高い代わりにプライバシーが確保しやすく、片方の世帯が居住しなくなった場合には、賃貸物件として貸すことも可能です。
完全分離型のデメリット
二世帯住宅の中でも、建築費用がもっとも高いのが完全分離型です。
また完全分離とはいえ、水平分離型(横割り分離)二世帯住宅で1階を親世帯、2階を子世帯にする場合は、2階の足音が1階に響いて気になるケースがあります。
二世帯のプライバシーは最も確保できる間取りタイプですが、子供の面倒を見てもらうときや親世帯の介護が必要になったときには、内部で繋がっていないために不都合が生じることも懸念されます。
3.二世帯住宅によるトラブルを回避する方法
それでは最後に、二世帯住宅を建てる前に知っておきたいトラブル回避法をご紹介します。
1)二世帯住宅の実績が豊富な会社に依頼する
二世帯住宅で起きやすいトラブルを回避するためには、二世帯住宅の設計・施工実績が豊富な会社に依頼しましょう。
実績が少なくても、設計事務所や建築会社であれば、二世帯住宅を建てることはできます。
しかし、二世帯住宅の商品ラインアップが豊富な住宅会社には、二世帯特有のノウハウが蓄積されているもの。
設計・施工実績が豊富な会社を選んだほうが、建てた後のトラブルを見越したアドバイスに期待できます。
2)間取りをよく検討する
「建築費を節約したい」ということから、完全同居型や部分共有型の二世帯住宅を選ぶ人も少なくありません。
しかし、費用を優先して決めてしまうと後悔してしまうことも。
生活後のストレスもそうですが、大切なのはお互いこれから年を重ねていくことを見据えて間取りを検討することです。
建てた後の生活や親の老後のことを考え、ストレスフリーかつバリアフリーの住まいとすることで、お互い長く、居心地よく住み続けられるものです。
二世帯住宅のメリットは、親世帯が若く、元気なうちに、これからのことを話し合えることでもあります。
3)遮音性を高める
生活リズムも世代も異なる二世帯が一緒に生活するなら、音問題の対策は重要です。
遮音性を高め、住宅プランを工夫して、できるだけ音が気にならない二世帯住宅にしましょう。
階段や2階を歩く足音は、意外と階下に響きます。またテレビやゲーム、水周りの音が気になるなど、音が原因で寝つけないということも。
生活リズムが違う二世帯が一つ屋根の下に住むことで「寝たいのに眠れない」「まだ寝ていたいのに目覚めてしまった」という問題が起こります。
音が出る場所と寝室をできるだけ離すなど、住宅の遮音性を高めることとともに間取りを工夫するのがポイントです。
4)住む前にルールを決める
建築前に資金計画や負担割合を決めるのはもちろんのこと、水道光熱費などのランニングコストの配分をどうするか、入浴や食事の時間、家事の負担割合など十分な話し合いをしましょう。
住み始めると、小さな不満は相手に言いづらくつい我慢しがちです。
共用部分がある二世帯住宅の場合、共用部の掃除や整理整頓はどちらがするのか、どの収納をどちらが使うのかなど、同居前には費用以外のルールもある程度、決めておくことをおすすめします。
4.まとめ
二世帯住宅は建築費が節約でき、子世帯は「孫の面倒を見てもらえる」、親世帯は「老後に子どもがそばに住んでいたら安心」などの理由で選ばれています。
しかし、お互い頼るのは良いですが、負担に感じていないか気遣いも必要。
子には子の、親には親の人生があることを忘れず、協力しあうことこそ、二世帯同居を上手くいかせる秘訣です。