東急に仲介手数料返還命令!仲介手数料はいくらが正しいのか
先日、東京高裁で不動産業界注目の判決が出ました。
賃借人が不動産会社大手の東急リバブルを相手取って、すでに支払った仲介手数料1ヶ月分のうち半月分の返還を求めた裁判で、賃借人の請求が認められたのです。
そこで今回は、本判決のポイントを徹底解説することで、仲介手数料について正しい知識をお届けできたら幸いです。
1.東急リバブルが敗訴した裁判の全体像
原告である賃借人は、東急リバブルの仲介で賃貸物件を契約し引き渡しも受けましたが、仲介手数料1ヶ月分の支払いについては事前に承諾していなかったとして、半月分の返還を求めたのです。
仲介手数料はいくらが正しい?
ここでまず確認しておきたいのが、不動産賃貸において宅建業者が請求できる仲介手数料の上限金額です。
宅建業法では仲介手数料の上限について、「国土交通大臣の定めるところ」によると規定しており、具体的な内容は国土交通省のホームページで確認できます。
※出典:国土交通省 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額 1ページhttps://www.mlit.go.jp/common/001307055.pdf
内容をまとめると次の通りです。
- 宅建業者が貸主、借主双方から受け取ることができる仲介手数料の合計額は、家賃の1ヶ月分(税別)以内とする
- 居住用物件の仲介の場合、一方から受け取る仲介手数料の額は「媒介の依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ている場合を除き」家賃の0.5ヶ月分(税別)以内とする
簡単にまとめると、居住用建物について仲介する場合に賃借人から受け取ることができる仲介手数料は、原則として家賃の半月分(税別)までであり、例外的に媒介の依頼を受けるにあたって本人から承諾を得れば、家賃の1ヶ月分(税別)を請求できるということです。
原則:家賃の半月分(税別)
例外:家賃の1ヶ月分(税別)
上記の原則と例外を、逆に捉えていた方は少なくないのではないでしょうか。
実際、多くの不動産会社で仲介手数料を当たり前のように家賃の1ヶ月分請求しているため、今回の判決で半月分の返還が命じられたことで注目を集めたのです。
ただ、今回の裁判の注目すべき点は、東急リバブルが仲介手数料について事前に承諾を得ていなかったということではなく、「承諾を得るべきタイミング」について双方の主張にズレがあったという部分にあります。
2.承諾を得るべき正しいタイミングとは?
賃借人に家賃の1ヶ月分の仲介手数料を請求するためには、事前に賃借人の承諾を得ている必要がありますが問題なのはそのタイミングです。
告示では「媒介の依頼を受けるにあたって」と規定されていますが、そのタイミングが具体的にいつなのかについて裁判の争点となりました。
東急リバブル側の主張
東急リバブルが「媒介の依頼を受けるにあたって」のタイミングとして主張したのは、賃貸借契約の締結日です。
東急リバブルとしては、賃貸借契約日の1月20日に先立って1月15日の段階で仲介手数料1ヶ月分と記載した契約金の明細書を賃借人に提示しており、その時点で承諾を得ていたため、仲介手数料1ヶ月分の請求に問題はないと主張しました。
賃借人の主張
賃貸借契約の契約日当日が「媒介の依頼を受けるにあたって」のタイミングだと主張する東急リバブルに対し、賃借人は賃貸借契約の締結日が決定した1月10日こそが「媒介の依頼を受けるにあたって」のタイミングであると反論しました。
賃借人は1月8日の段階で東急リバブルに対して、当該物件で契約する旨の意思を担当者に伝え、これを受けて担当者が賃貸借契約日を設定し、その旨を1月10日に賃借人に連絡したのです。
つまり、賃借人が主張した「媒介の依頼を受けるにあたって」のタイミングの方が、仲介手数料1ヶ月分が記載された明細を提示された1月15日よりも早かったということになります。
賃借人としては本来承諾を得ておくべきタイミングまでに承諾をしていないのだから、仲介手数料は半月分が正しく、残りの半月分は返還するよう請求したのです。
3.裁判所の判断はどっち?
裁判所の出した結論としては、「媒介の依頼を受けるにあたって」のタイミングは原告である賃借人が主張した、契約締結日を連絡した1月10日だと認定しました。
よって、その時点で承諾を得ていない東急リバブルに対して半月分の返還を命じたのです。
不動産会社に求められる今後の対応
今回の裁判の注目すべき点は、「賃貸借契約日=媒介依頼成立日」ではないと裁判所が判断したことです。
不動産会社の多くは賃貸借契約を締結する当日に仲介手数料の明細を提示したり、「契約成立時には媒介報酬として賃料の1ヶ月分を支払うことを承諾いたしました」などと記載した承諾書に署名捺印したりする運用を行っているため、今回の一件で今後はさらに早いタイミングでの承諾が必要になります。
少なくとも契約日が決まった段階で承諾を得ている必要が出てきたため、できれば入居申込書の提出を受ける時に、仲介手数料の金額について説明して承諾を得ておいた方がよいでしょう。
4.まとめ
仲介手数料に関するトラブルは、賃貸物件のオーナーからすると直接関係するところではありません。
ただし、借主と貸主合計で家賃の1ヶ月分という規定がある以上、借主が支払う仲介手数料の金額が今後減るようなことがあれば、貸主の負担額に影響が出る可能性も考えられます。
物件のオーナーとしては不動産会社に仲介を依頼する際に、どのような報酬がいくらかかるのかについて確認を徹底しましょう。