令和のお部屋探しは自宅で快適!?IT重説とは?
いまどきのお部屋探しといえば、インターネットを使った物件情報検索はもちろん、VR内見やセルフ内覧システム等を利用して不動産会社に足を運ばずとも気楽に探せる時代となりました。
しかし、いざ住む部屋が決まると重要事項説明を受けるために必ず不動産会社に行く必要があり、遠方にお住まいの方や多忙で時間が取れない方には大きな負担となっていました。
今回は、そんな負担を解消することができるIT重説(ITを活用した重要事項説明)について紹介します。
1.そもそも重要事項説明とは
不動産会社と賃貸契約を行う上で必要不可欠な「重要事項説明」とは、宅地建物取引業法で定められている賃貸借契約が成立するまでの間に、賃貸仲介や代理を行う不動産会社が、取引当事者に対して賃貸借物件や契約条件に関する重要事項を説明することです。
その際に使用される重要事項説明書は、入居に際して重要なことを事前に説明し、証拠を残す事で入居後のトラブルを防止する、とても重要な役割を果たしています。
従来、賃貸借契約までの流れは物件選びから始まり内見、入居申込み、入居審査、契約締結と進みますが、1日で契約まで至るのは難しく必然的に何度も不動産会社に足を運ばなければなりませんでした。
しかし、今回紹介するIT重説の登場により、最短1日での契約が可能になりました。
2.ITを活用した重要事項説明(IT重説)
2013年に行われた日本政府による世界最先端IT国家創造宣言を発端に、行政主導の下で対面あるいは書面交付によるサービスや手続きのIT活用を促進する動きが高まり、国土交通省では2014年よりIT重説導入の検討を開始、有識者による検討会と社会実験を経て、2017年10月より賃貸取引に係るIT重説の実用開始が決まりました。
IT重説
テレビ電話やWeb会議システムを活用して行う重要事項説明を指す
取引当事者は、パソコンやスマートフォン、タブレット等の端末を利用して、対面と同様に説明を受け、あるいは質問の受け答えを行える環境が必要となります。
国土交通省による「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、IT重説を対面による重要事項説明と同様とみなすための要件を次のとおり定めています。
- 双方向でやりとりできるIT環境において実施
- 重要事項説明書等の事前送付
- 説明の開始前に相手方の重要事項説明書等の準備とIT環境の確認
- 宅地建物取引士証を相手方が視認できたことの画面上での確認
IT重説により、転勤先や就学先を探すために遠方から物件を探している契約者は、下見の後に不動産会社を再度訪問する時間コストと費用コストを軽減することが可能となりました。
不動産の購入・売却については、現在IT重説の対応はされていませんが、実証実験は進んでいます。IT重説が対応可能になった際は、地方の物件の購入を検討している契約者についても同様のことがいえます。
また、仕事で平日には十分な時間が取れない、長時間家を空けることが難しい、あるいは怪我等により外出が困難な方は、お部屋探しを自宅の中で完結することも可能となりました。
3.IT重説が抱える課題
国土交通省が実施したIT重説に関するアンケートによると、「実施業者の約9割は機器トラブル等無く円滑に実施ができたと回答、また利用した契約者の約7割弱はIT重説を今後も利用したい」と回答しています。
※出典:国土交通省 IT重説実施直後のアンケート結果 16ページhttps://www.mlit.go.jp/common/001124181.pdf
IT重説の活用は、不動産会社と契約者の双方に大きなメリットがある一方、安定した通信環境下で取引を実施するための設備導入コストに、社内業務フローの変更や従業員に対して指導教育するノウハウの確保等、IT重説の実施までに要する不動産会社の負担は大きく、取り扱っている不動産会社の数がまだまだ少ないのが現状です。
しかし、契約者側の需要は増す傾向にあり、IT重説専用のシステムサービスを提供している主な事業者によると、専用システムを介して実施されたIT重説の実施件数の合計は、実用開始から2019年1月31日までに25,000件を超え、現在も着々と件数を伸ばしています。
また、この間にIT重説を起因としたトラブルの件数は0件と問題無く取引が可能なことがわかります。
4.まとめ
IT先進国であるアメリカでは、賃貸契約のみならず売買契約も含めた不動産取引全体の9割以上がオンライン上で完結しています。
まだまだITの普及率が低い日本の不動産市場ですが、賃貸取引においては2019年10月より「賃貸借契約における電子書面交付」の社会実験が始まり、今後の検討結果によっては賃貸取引の全てをオンライン上で完結する事が近い将来可能となります。
また、すでに大手物件検索サイトでは検索条件にIT重説の選択項目が設けられており、IT重説対応物件と非対応物件とでは今後の成約率に大きく影響を与える可能性があります。
これからの時代、不動産会社を選ぶ際にITサービスの導入状況はひとつのバロメーターとして注目すべきポイントかも知れません。
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