投資効率を示すROIとCCRとは?計算方法と不動産投資への活かし方
不動産投資では、投資効率を測る指標として「ROI(Return On Investment)」と「CCR(Cash On Cash Return)」が重要視されます。
ROIは投資利益率を表し、投資した資本に対してどれだけの利益を得られたかを示します。
一方、CCRは自己資金収益率を意味し、投資に用いた自己資金に対するキャッシュフローの割合です。
利回りなどわかりやすい指標だけでなく、こうした指標を正しく理解することで、不動産投資の収益性を適切に把握し、さまざまな投資判断に活かすことができるでしょう。
本記事では、ROIとCCRの計算方法や不動産投資への活用方法について詳しく解説します。
1.不動産投資の利回りとは?
利回りとは、元本に対してどれぐらい増えたかを示すの割合のことです。
不動産投資の利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があります。
1)表面利回り
表面利回りは、不動産投資の収益性を表す最も簡単な指標です。
年間の賃料収入を物件の購入価格で割ることで算出されます。
表面利回り=(家賃収入÷物件の購入価格)×100
たとえば、3,000万円の物件を購入し、年間の賃料収入が300万円だった場合、表面利回りは10%となります。
ただし、表面利回りは物件の維持費用や空室期間などを考慮しておらず、実際の収益性を正確に反映していません。
2)実質利回り
実質利回りは、表面利回りに物件の維持費用や空室期間などを考慮した現実的な収益性の指標です。
年間の賃料収入から物件の維持費用を差し引き、物件の購入価格で割ることで算出されます。
実質利回り=(家賃収入-必要経費)÷物件の購入価格×100
年間維持費用には、固定資産税、都市計画税、管理費、修繕積立金、火災保険料、借入金の支払利息などが含まれます。
たとえば、物件購入額3,000万円、年間の賃料収入が300万円、年間の維持費用が50万円だった場合、実質利回りは以下のように計算されます。
実質利回り(%)=(300万円-50万円)÷3,000万円×100=8.33%
このように、実質利回りを計算することで、より正確な不動産投資の収益性を把握することができます。
ただし、不動産投資ではローンを組む事でレバレッジを効かせた資産運用が可能です。
そのため、利回りだけで物件選定や運用を行うのは不十分だといえるでしょう。
利回りは投資の判断材料として重要ですが、「ROI」や「CCR」もレバレッジ効果と収益率の関係を知るうえで重要な指標になります。
2.ROIの計算方法
ROIとは「Return On Investment」の略で、投資利益率を指します。
不動産投資を含むあらゆる投資における指標の一つです。
投資利益率とは、投資した資本に対してどれくらい利益を得られたかを表します。
ROIの数値が高ければ高いほど、物件の利益率が高いという事です。
ROIは以下の式で計算できます。
ROI=年間のキャッシュフロー÷購入総額(物件価格+諸費用)×100
「年間のキャッシュフロー」とは、年間の家賃収入から修繕費・ローンの返済額等の不動産運用にかかった費用を差し引いた金額です。
なお、物件選びの段階では、キャッシュフローは予想額で試算しましょう。
3.ROIと同時に参考にすべきCCRとは?
ROIと並ぶ不動産投資の重要な指標として、「CCR」があります。
CCRは正式名称「Cash On Cash Return」で、自己資金収益率のことです。
投資額に対するキャッシュフローを予測することができます。
CCR=年間のキャッシュフロー÷自己資金×100
CCRは投資額の中で他人資本(借入金)を除いた自己資金に対してキャッシュフローがどれだけ出ているかを示す指標です。
ROIとの違いは、借入金を含めないで計算するということです。
そのため、借入をしている人や、借入金額によって数値は異なります。
4.ROI・CCRを計算してレバレッジ効率の判断をする
総額2,000万円の物件を例に、自己資金のみで物件を購入した場合と、融資を受けて物件の購入した場合のROIとCCRを計算してレバレッジ効率を見てみましょう。
【物件データ】
物件価格:2,000万円
表面利回り:5%
管理費:10万円
1)自己資金のみで購入した場合
上記の条件で物件を購入した場合、次のようになります。
ROI
90万円(100万円-10万円)÷2,000万円×100=4.5%
CCR
90万円(100万円-10万円)÷2,000万円×100=4.5%
自己資金のみで購入しているため、レバレッジ効果はなく、ROIとCCRの値も同じです。
なお、自己資金額を年間のキャッシュフロー額で割ると、自己資金回収に掛かる期間「投下資本回収期間」が算出できます。
投下資本回収期間=投下自己資金額÷年間キャッシュフロー額
2,000万円÷90万円=22.2年
2)融資を受けて購入した場合
自己資金200万円、残りの1,800万円を融資利用で、ローン返済額が年間60万円だとした場合、次のようになります。
ROI
30万円(100万円-10万円-60万円)÷2,000万円×100=1.5%
CCR
30万円(100万円-10万円-60万円)÷200万円×100=15%
ROIの数値は、融資返済によって下がりました。
一方、CCRの数値は自己資金のみで購入した場合の4.5%から15%に上昇しています。
借り入れをすることで、レバレッジ効果が働き、収益率が3倍以上アップしました。
なお、投下した自己資金を回収する期間も、自己資金のみで購入した場合と比べると、3分の1以下に短縮されます。
投下資本回収期間=投下自己資金額÷年間キャッシュフロー額
自己資金200万円の場合:200万円÷30万円=6.6年
3)融資を受ける手順
融資を受けるには、以下のような書類が必要です。
1. 物件関連書類
物件概要書、レントロール、売買契約書、重要事項説明書、不動産登記簿謄本、公図、建築図面等、建築確認済証
2. 個人情報関連書類
本人確認のための身分証明書、実印、印鑑登録証明書、住民票の写し、所得を証明するもの(源泉徴収票や確定申告書)、勤務先の概要、職歴書、納税証明書、不動産関連の資格等証明書(所有している場合)、ローン償還予定表、返済明細書、保有資産一覧
融資審査は、契約前の仮審査(事前審査)と、契約後の本審査に分かれています。
仮審査では、主に上記の書類から債務者の属性や、信用情報から返済能力が審査されます。
本審査では、物件の収益性や担保評価を基に審査されます。
融資審査についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
関連:不動産投資ローンの必要書類と入手方法は?審査の流れもあわせて解説
5.キャッシュフロー計算書を作成しよう
ROIとCCRの計算方法や、不動産投資への活かし方についてお分かりいただけたでしょうか?
更に分かりやすく経営状態を把握されたい方には、キャッシュフロー計算書の作成をご提案します。
既に不動産投資を行っており、確定申告で青色申告を行っている方は「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」を作成し、税務署に提出している事でしょう。
「貸借対照表」「損益計算書」に加えて「キャッシュフロー計算書(C/F)」を合わせた「財務3表」と呼ばれる書類は不動産経営において役に立つ書類です。
財務3表の内容をすべて把握し経営に活かしていく事は、最初はなかなか難しいためまずは「キャッシュフロー計算書」を作成し、経営に活かしていきましょう。
キャッシュフロー計算書は物件から入る家賃収入と広告費・修繕費等の経費、税金等を差し引き最終的に手元の財布の中身にいくら残るのかを計算したものになります。
難しく聞こえますが、小学生が付けるお小遣い帳と同じです。
Excelで簡単な表を作り、記入していきましょう。
6.ランニングコストを抑えて投資効率を高める方法
不動産投資を始める際は、物件の取得費用だけでなく、維持・運用のためのランニングコストも考慮する必要があります。
不動産投資のランニングコストは、「税金」と「建物管理・賃貸管理にかかる費用」に大別され、以下のような税金や費用が含まれます。
- 固定資産税・都市計画税
- 所得税・住民税
- 管理費・修繕積立金
- 賃貸管理手数料
- 損害保険料
- メンテナンス・修繕費用
- 入居者募集費用
これらのランニングコストの目安は、月額家賃の20%~30%程度とされています。
不動産投資で経費を抑える具体的な対策としては、以下が挙げられます。
- 適正な管理手数料を設定している賃貸管理会社の選択
- 修繕や設備交換時の費用対効果の確認
- 経費の適切な計上
- 自身による確定申告
- 不動産投資ローンの借り換えなど
これらの対策を実践することで、ランニングコストを削減し、キャッシュフローを改善することができます。
不動産投資で利益を出すためには、ランニングコストを含めた正確な利回り計算と適切な物件選定とコスト管理が重要です。
記事:ワンルームマンション投資のランニングコストは?固定費を抑える対策5選
7.原資回収に必要な期間を調べるには?
不動産投資で元を取るまでにかかる期間を算出する方法は、次のように複数あります。
- 72の法則:「72÷金利(%)」で資産が2倍になるまでの期間を計算する
- 利回りから考える:実質利回りを用いて元を取るまでの大まかな期間を算出する
- CCR(自己資金配当率)を使う:「1÷CCR」で元を取るまでの年数を計算する
- IRR(内部収益率)を使う:時間の価値も考慮に入れたうえで将来的にどれだけ効率的にリターンが得られるか検討する
ワンルームマンション投資の場合、一般的に約10年で元を取れると考えられています。
しかし、各物件の条件や市場環境によって変動するため、適切な指標を用いたシミュレーションを行うことが重要です。
関連:不動産投資で元を取るまでには何年必要?ワンルームマンションの場合を例に解説
8.指標や計算書を活用した不動産投資を!
表面利回りと実質利回りに加え、ROIやCCR、そしてキャッシュフロー計算書など、不動産投資における重要な指標や計算書をご紹介しました。
これらを活用すれば、安定した不動産投資が行えるようになるはずです。
良好なキャッシュフローのもとで、資産形成を図りましょう。