コロナ禍で増える生活保護受給者の賃貸事情!受け入れを検討するオーナーが知るべきことは?
厚生労働省は7月6日、4月の生活保護申請が1万7758件だったと発表しました。
申請件数は4ヵ月連続で減少していますが、新型コロナウイルス拡大前の2019年4月と比べると3.3%増えており、コロナ下で生活保護受給者が増えているようです。
生活保護受給者の賃貸受け入れ事情は非常に厳しく、滞納リスクやトラブルを懸念するオーナーや管理会社から敬遠され、入居を断られやすい状況にあります。
増加する生活保護受給者を賃貸住宅に受け入れることは、これからの賃貸経営に役立つかもしれません。
今回は、生活保護受給者について、賃貸住宅の受け入れ事情と、受け入れを検討するオーナーが知っておくべきことをご紹介します。
1.「歓迎されない」生活保護受給者の賃貸事情
まずは、生活保護受給者がどのような理由で賃貸住宅への入居を断られているのかを見ていきましょう。
1)オーナーや管理会社に断られる
生活保護受給者は、家賃滞納や入居者トラブルを懸念するオーナーや管理会社に入居を断られるケースが少なくないようです。
高齢の生活保護受給者については、孤独死リスクが高く、特殊清掃費用の発生や事故物件となりうる可能性があることからオーナーに敬遠されがちです。
2)不動産会社に断られる
生活保護受給者を仲介する場合、不動産会社のスタッフは区役所や市役所などとのやりとりが増えるため、生活保護受給者の部屋探しに対応しないケースも珍しくないようです。
内見案内や、部屋探しの依頼を効率よく対応しなければならい不動産会社スタッフにとって、手間のかかる生活保護受給者の接客は難しいことが実情にあります。
2.生活保護受給者の属性
生活保護を受給するに至った理由は人それぞれです。
次は、どういった世帯が生活保護受給者に多いのかを見ていきましょう。
1)高齢者世帯
全国の生活保護受給世帯163万世帯のうち、55%が高齢者世帯です。
生活保護受給者に高齢者が多い理由としては、収入や貯蓄の減少による経済状況の悪化のほか、高齢者自体の母数が増えている社会情勢が原因だと考えられます。
2)障害者・傷病者世帯
高齢者世帯を除いた生活保護受給世帯は44.7%で、そのうち障害者・傷病者世帯が24.9%を占めます。
障害者は、身体障害や精神障害などがあり、傷病者も種類や症状がさまざまです。
3)母子世帯
母子世帯は4.6%を占めます。
たびたびメディアで取り上げられるように、日本では経済的に苦しい状況に陥っているシングルマザーが社会問題になっている背景があります。
3.入居までの流れ
さまざまな事情を抱えた生活保護受給者が賃貸住宅に入居するには、不動産会社やオーナーだけでなく、ケースワーカーのサポートも欠かせません。
次は、入居までの流れを見ていきましょう。
1)住宅扶助の承諾をもらう
生活保護受給者は、自治体(福祉事務所)の窓口でケースワーカーに相談し、住宅扶助(家賃補助)を受給できるよう承諾をもらいます。
2)部屋を探す
生活保護受給者は、住宅扶助を受給することを不動産会社の営業スタッフに伝えたうえで、物件を探します。
物件が決まったら見積もりを受け取ります。
3)自治体(福祉事務所)へ報告
生活保護受給は、物件情報と見積もり額をケースワーカーに報告します。
4)入居審査
ケースワーカーの了承後、不動産会社またはオーナーが入居審査を行います。
5)契約日程を決める
生活保護受給者は、初期費用が準備できる日程をケースワーカーに調整してもらいます。
その日程に合わせて契約締結日を決めます。
6)賃貸借契約の締結
賃貸借契約を締結します。
生活受給者は、契約書および初期費用の領収書をケースワーカーに提出します。
7)入居する
複数の引越し業者の見積もりを取り、ケースワーカーと利用する業者を決めて、契約時に決めた契約日に転居します。
生活保護受給者には、転居にかかる費用が支給されます。
4.生活保護受給者を受け入れるメリット&デメリット
次は、生活保護受給者の受け入れで考えられるオーナーのメリットとデメリットを見ていきましょう。
1)メリット
・実は滞納リスクが低い
・長期入居が期待できる
生活保護受給者は、居住に必要な住宅扶助(家賃補助)を各地方自治体から受け取ることができます。
受け取り方は、受給者が受け取る方法のほか、行政が管理会社に家賃として支払うことも可能です。
生活保護受給者の中には、金銭の管理が苦手な人もいるので、その場合は、管理会社が直接家賃を受け取ることで滞納リスクを回避することができるでしょう。
また、生活保護受給者は不動産会社やオーナーに敬遠されがちなため、入居できる物件が制限されます。
一般の人のように物件の選択肢が多い中で転居先を探すことができないため、一度受け入れてしまえば長く住んでくれる可能性が高いといえます。
転居するにしてもケースワーカーの許可が必要になります。
2)デメリット
生活保護受給者の中には、薬物依存や精神疾患を持つ人もおり、近隣に迷惑をかけてしまう懸念もあります。
生活保護受給者を受け入れるオーナーが注意すべき点については、以下の記事をご覧ください。
【参考:生活保護受給者と賃貸借契約をする場合の注意点】
まとめ
なかなか部屋が借りられない生活保護受給者を一度受け入れてしまえば、長期入居につながる可能性があります。
また、滞納リスクは管理会社が住宅扶助を直接受け取ることで回避できます。
入居中のトラブルに対応できるよう事前に手を打っておくことは、生活保護受給者を受け入れるオーナーにとって必要不可欠です。
コロナ禍で増加する生活保護受給者の受け入れは、物件を所有するオーナーだからできる社会貢献度の高い取り組みとも言えるでしょう。