【建築士解説】不動産投資物件は木造・S造・RC造・SRC造どれにするべき?構造ごとの特徴を解説
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建物の構造によって、建築費用や耐用年数などには違いがあります。
不動産投資をするうえでは、物件の立地や広さ、築年数のみならず、建物の構造を踏まえて慎重に選びたいものです。
•木造
•鉄骨造
•鉄筋コンクリート造
•鉄骨鉄筋コンクリート造
ここでは、上記のような不動産投資物件の代表的な構造について、それぞれの特徴や投資物件で採用する時の注意点についてご紹介します。
1.建物の構造種別と特徴
木造と非木造に分けてそれぞれの特徴をご説明します。
1)木造:法定耐用年数は22年
在来工法(軸組工法)
柱や梁などの主要部に木材が使われた「木造」のうち、昔からある日本古来の工法を「在来工法(または軸組工法)」といいます。
柱・梁・筋かい等の木材で構成されるため、開口部がつくりやすく、設計の自由度も高いです。
施工できる工務店や建築会社が多いメリットの一方で、施工者の腕によって品質にばらつきが出ることもあります。
枠組壁工法(ツーバイフォー工法)
枠組壁工法は、北米で誕生した後に日本でも普及した木造の工法のひとつです。
ツーバイフォー工法は、2インチ×4インチの角材を使用しているため、そのように呼ばれています。
構造材にパネルの面材を使用し、面で支える構造です。
規格化され工場で生産・加工されて現場で組み立てるため、品質のばらつきが少なく工期が短いメリットがあります。
2)非木造:法定耐用年数は構造で異なる
軽量鉄骨造/重量鉄骨造
柱・梁などの主要部分が鉄骨(スチール)でつくられた建物を「鉄骨造」といいます。
法定耐用年数は、軽量鉄骨造が27年、重量鉄骨造が34年。
鋼材の厚みによって呼び方が異なります。(建築基準法関連告示による区分)
•鋼材厚6mm未満:軽量鉄骨造
•鋼材厚6mm以上:重量鉄骨造
鉄筋コンクリート造(RC造)
骨組みを鉄筋で施工し、型枠を組んでコンクリートを流し込んでつくられた建物です。
法定耐用年数は47年。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
H鋼などの鉄骨柱の周囲に鉄筋を組み、コンクリートを流し込んでつくられた建物です。
法定耐用年数は47年。
2.木造のメリットとデメリット
木造は、日本の伝統的な建物構造です。
木造の工法は、次の2つに大別されます。
•在来工法(軸組工法)
•枠組壁工法(ツーバイフォー工法など)
木造は、戸建住宅や3階建てまでのアパート、テラスハウス(長屋)などに多くみられる工法です。
1)木造のメリット
•建築費用が安価
木造は鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて、建築費用が最も安価です。
建築コストが抑えられるため、高利回りでの運用に期待できます。
2)木造のデメリット
•耐用年数が短い
•遮音性が劣る
木造の法定耐用年数は22年。
RC造やSRC造と比較すると耐用年数が短い点が、木造のデメリットといえるでしょう。
しかし「法定耐用年数」とは国税庁が定めた数字で、税金を計算する際の使用期間の目安です。
耐用年数を過ぎたら住めなくなるというものではなく、適切にメンテナンスすることで実質的な耐用年数は延ばせます。
ただし、融資が組めるのは基本的に耐用年数まで。
中古の木造物件はとくにローンを組める期間が短くなるので注意してください。
木造は他の構造に比べて遮音性が劣ります。
アパートはマンションに比べて音が響きやすいため、部屋を借りたい人にも敬遠されることがあります。
3.鉄骨造(S造)のメリットとデメリット
鉄骨造は、英語で「Steel Construction」。
S造とも呼ばれます。
鋼材の厚さで、次の2種類に区別されます。
•重量鉄骨造:鋼材厚6mm以上
•軽量鉄骨造:鋼材厚6mm未満
重量鉄骨造は、4階建て以上のマンションやビルで多く採用されています。
一方で、軽量鉄骨造は、大手ハウスメーカーが得意とする3階建て以下のアパートや戸建住宅に多くみられます。
1)鉄骨造のメリット
•耐久性、耐震性に優れる
•耐用年数が長い
•重量鉄骨造の共同住宅は「マンション」と表記される
鉄骨造は、耐久性や耐震性に優れます。
法定耐用年数も34年(鋼材の厚みが4mm以上の場合)と長く、投資物件として長期運用しやすいのがメリットです。
重量鉄骨造の共同住宅は「アパート」ではなく「マンション」と表記されるため、入居者を集めやすいのもメリットといえるでしょう。
2)鉄骨造のデメリット
•建築費用が高め(重量鉄骨造)
•遮音性が低い(軽量鉄骨造)
•軽量鉄骨造は「アパート」表記になる
重量鉄骨造は強度の高さにメリットがある一方、建築費用は木造と比較して高額です。
軽量鉄骨造であれば建築コストは抑えられますが、遮音性が低いため防音対策が求められます。
軽量鉄骨造の共同住宅は「アパート」と表記されるため、「マンション」と比較すると需要・家賃ともに劣ります。
4.鉄筋コンクリート造(RC造)のメリットとデメリット
鉄筋コンクリート造は、英語で「Reinforced Concrete Construction」。
RC造とも呼ばれます。
RC造は、柱や梁を鉄筋とコンクリートで構成する構造です。
鉄筋を組んでから型枠を施工し、型枠の中にコンクリートを流し込み、一体化した建物をつくります。
RC造は、マンションやビルなどに多く見られる構造です。
1)鉄筋コンクリート造のメリット
•耐火性、耐久性、遮音性に優れる
•耐用年数が長い
RC造に使われるコンクリートは不燃材料であり、耐久性・遮音性も高いという特徴があります。
鉄筋は火に弱く、さびやすいという特徴がありますが、コンクリートで鉄筋を覆うことでこれらのデメリットが補えます。
鉄骨造や木造の集合住宅と比較すると、騒音トラブルも起きにくいでしょう。
RC造は、法定耐用年数が47年と長いのもメリット。
長く運用できることから、投資費用を回収できる可能性も高い構造だといえます。
2)鉄筋コンクリート造のデメリット
•建築費用が高め
RC造の建築費用は、坪単価100~120万円程度です。
木造と比較すると2倍近くの建築コストがかかります。
5.鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のメリットとデメリット
鉄筋コンクリートは、英語では「Steel Reinforced Concrete Construction」。
SRC造とも呼ばれます。
RC造との違いは鉄骨(Steel)が入っていること。
SRC造は柱や梁を鉄骨・鉄筋・コンクリートで構成されます。
マンションやビルの中でも、高層の建物によく見られる構造です。
1)鉄骨鉄筋コンクリート造のメリット
•耐火性、耐久性、遮音性に優れる
•RC造に鉄骨が加わるためさらに高い強度に期待できる
•耐用年数が長い
SRC造は、RC造に鉄骨を組み合わせた構造のため、さらに高い強度に期待できます。
SRC造もRC造と同じく、法定耐用年数は47年。
中古物件を購入しても投資費用を回収できる可能性が高いのがメリットです。
2)鉄骨鉄筋コンクリート造のデメリット
•建築費用が高め
建築費用は、RC造と同様に高額です。
建築コストを回収するためには、建築計画やキャッシュフローをよく検討する必要があります。
マンションの一室を中古で購入して投資する方法も良いでしょう。
6.投資の目的・スタイルによって構造の選択を
木造は、自己資金やローンを抑えて運用したい人、新築して自己所有しローンを完済してから収益化したい人、アパート需要が見込める土地に向いているといえるでしょう。
一方、鉄骨造や鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造は、長期的に投資に取り組みたい人やマンション一室から投資をスタートする人に向いています。
建物の構造を考慮することで、より具体的な資金計画および出口戦略を練ることができます。
投資物件選びの際には、利回りや入居率だけでなく、建物の構造にも目を向けてみましょう。